平和教育教材

  01、教材研究 「呉の歴史絵本」  表紙  奥付

 はじめに…「歴史教育」の一般常識から

 歴史とは、人間の無数に行なった事象の中から、一定の価値観(歴史観)に従って、
 特定の事実を取捨選択し、整理をして、理解しやすく記述したものです。

 歴史を研究したり、学習する大きな目的の一つは、歴史を鏡(鑑)として、
 成功と失敗の経過を学び、今後の生活向上、未来の発展に役立てることです。

 だから、良い事、成功事例だけを取り上げるのではなく、必ず、失敗事例、歴史課題を
 謙虚に取り上げ、その原因や経過を記述し、「転ばぬ先の杖」とします。

 「呉の歴史絵本」も当然、ある価値観(史観)に基づき、子供や市民を一定の方向に
 導く意図で編纂されています。

 その内容には、明るい成果と共に、鏡として教訓になる歴史的課題、歴史的教訓が
 記述されていなければなりません。

 歴史課題として、「軍港建設時の庶民生活」「呉空襲」「枕崎台風」などで
 少し記しているが、その原因や経過を教訓になるように記述していません。

 この「歴史絵本」は気楽で明るい「絵物語」であって、「歴史の真実」にはほど遠く、
 学校に配布されて「(偏った)呉の歴史」が子供たちの人格形成に利用されます。

 正すためには、呉や日本の歴史で子供や市民に必要な、鏡として教訓になる歴史課題、
 歴史的教訓は何か、と言う観点を軸に研究批判する必要があります。

   《 考える柱・視点を例示します。他の視点も考えて加えてください。》

  柱・視点に沿って、どんな出来事、歴史課題、解説を付け加えたらよいか、
  書き出して研究し、新たな教材を付け加えて、優れた郷土史教材に改善しましょう。

T、総論
 1、「表題と発行者」を見て思うこと
  「子どもたちに語り継ぐ」……どんな立場の人が、どんな内容を、
      どのような教育方法で、何を期待しているか
  「呉の歴史絵本」………客観的で公正な記述か、絵の印象はどうか
  「日本の近代化と戦後の復興を支えたまち」…呉を特別視している表現、他都市は?
  呉の官製歴史教科書。軍都を自称する立場から(姉妹都市を見ると=米韓の軍都)

 2、配布方法と利用の目的   現場の要望、必要性はあったか、どの時間での指導か
   指導書解説…無条件賛美を押し付けて、「大和ミュージアム」旧軍施設の見学が中心

  指導書1  指導書2  指導書3  指導書4

    財政負担(無償配布)…1000円x小5〜中学生+教職員=

U、内容
 T、「発刊に当たって」市長挨拶……政治的意図の表明を読み取る

  「感謝し、郷土に対する誇りに胸を熱くする人間でありたい」…問題点を糊塗し、
   …影の部分・歴史的課題を切捨てる無批判な精神、軍都呉中心のエゴ的歴史観

  「東洋一の軍港として栄え」「日本の近代化や復興に大きな役割を果たし」
  ……世界や日本全体に目を向けない呉市の独善的自負、特化された軍需植民地、

  「日本の近現代史の縮図とも言える呉市」…偏った軍需産業中心に発展し、
    民需・市民生活軽視で、軍都からの清算が不十分。不況都市に転落している。

  「対象…児童・生徒…知恵や勇気をつかみ取り」…誤った思い込みを押し付け、
     歴史的課題の無視、全体を見ない歴史観、軍都復活への道を目指す教育。

 2、「目次」…その項目構成と記述内容・歴史観は妥当なものか  目次1  目次2

  「contents」 なぜ英語にするか、小学生に分かる言葉か。

  目次内容の表現、「発信地」「息づく街」「国を守り・ふさわしかった呉」
  「日本を守るまちとなった呉」「華やかな市民生活」
  「好景気が生んだ心の豊かさ」「願いを託した大和」「感謝と未来」
   …独善と美化、客観性や歴史的課題を軽視する、偏向性がひどい。

 3、「登場人物の設定」は「モデル」に相応しいか
    …地域、職業・階層・体験内容など…多くは他県他地域からの貧窮庶民、
      水兵・職工は生活苦の中で、どんな体験をしたか、何を典型化するか。

 4、「何を語り続けて」…過去の軍事技術遺産に頼る態勢が呉市の衰退化を招いた

   「歴史が息づくまち」…他地域でも息づいている。軍都を賛美、負の遺産の無視。

   「国を守り・ふさわしかった」…呉浦の地図は正しいか?宮原地区、幹線道路、他
     土地の強制収用、平和産業を圧迫、いびつな発展を遂げる

   「日本を守る・日露戦争へ参加」…侵略の出撃基地化、戦争賛美、自由の抑圧

   「日本一の海軍工廠」…軍需産業の美化、労働者の生活苦と反戦労働運動の発生

   「進む都市整備」…なぜ進んだか、労働力確保、海軍・工廠の整備→軍の方針

   「最先端の技術」…軍事優先で民生用技術の軽視→重税と浪費で健全な発展を阻害

   「教育システム」…学校教育の軍事化と階層的学校制度、軍事優先の人材確保

   「華やかな市民生活」…軍人・軍需産業下の浪費、労働運動や社会運動を無視

   「花開く文化・スポーツ」…「国防と産業博」美化、影で思想弾圧、差別の横行

   「願いを託した大和」…「日中衝突」戦火の拡大→侵略加害の隠蔽、戦争を当然視

    「大和」の絵は、建造当時のものでない。新技術より安定的技術の改良化が中心

   「市街地にも空襲」…戦時体制や軍都との関連が曖昧、戦災被害の記述が少ない

   「配給と闇市」…三角兵舎の絵の間違い。物資不足=戦争体制の諸問題と関連
     戦後の民主主義・自由の獲得の解説や戦争への反省がない。

   「旧軍転法」…特需ブームで再度の軍需化→再軍備と港湾制限問題で軍都化

   「世界一のタンカー」…大企業中心の記述。中小企業の育成不足と呉市の衰退原因

   「独自の技術」…充実した医療=旧軍・工廠・進駐軍との関係、軍都の関連
     技術があって、なぜ起こる呉市の経済衰退。原因は何か?産業変換の遅れ

   「感謝と未来」…先人の努力…課題と反省は何か、歴史の全面肯定・美化の弊害

V、資料編…「大和ミュージアム」観賞用の手引きとして、解説目的が合致している

 1、用語解説…もっと必要な歴史用語があるのでは?

 2、「船のできるまで・つくった船」…目的と必要性、どの教科内容か

   「歴史散歩」…旧軍関係が中心…観光案内的資料

 3、年表 児童生徒の目線がない 日常の学校・市民生活に無縁な資料が多い

W、奥付…誰が、何のために、どういう意図を持って出版したかが判る。

  企画監修 市教委…官製教科書 特定意見の下で作成、客観性・公平性に疑問?

  編集委 委員名 …立場の特色を観る、客観性を装うが「扶桑社」版の模倣では?

  調査研究部会 部員名…選定経過は公平で民主的か、教育実践力の信頼性は?


《文責》(呉市教育委員会 生涯学習課 平和教育きらりすと登録者) 朝倉邦夫

「何を正すべきか」研究批判して、教材を付け加え、良い教材に改善しましょう。

皆さんのご意見やご批判をお寄せください。

   メール宛先 :  呉戦災を記録する会



平和教育の目次に戻る

ホ−ムページ総目次に戻る