「いま憲法9条を
 新 宗教者は語る」


  「人間の原点に立つ凄さ」
臨済宗相国寺派 無碍光院住職 坂口慈航さん

  (さかぐち じこう 1943年大阪生まれ。関西学院大学卒業、
    無碍光院(京都市左京区)住職 「養徳9条の会」代表世話人)

 人開には基本的な業として、すぐ争いを起こてしまう悲しい本性があります。
それが政治の場にはっきりあらわれると戦争となり、実際、人間は古代から
戦争を繰り返してきました。
 最近も尖問諸島の問題で、日本も軍艦を出して中国をやっつけろと、
乱暴なことを平気で言う人が結構います。

 その中で、放っておけば悪い方向に行く流れの向きを変える努力が必要です。
人間の性に冷めた目を持ち、平和を維持する運動は、宗教者に課せられた
大切な仕事の一つではないかと思います。

 大きな心もち」

 ここ一、二年、地元の「9条の会」のみなさんと憲法の学習会を続けてきました。
私も改めて学んで、つくづくこの憲法はその全体が、ほんまに
人類の理想を示す一級の宗教書だな、と思いました。
 争いの解決のため武器を用いない、そして人間の一番の業ともいえる、
争いそのものを放棄しているのではないでしょうか。
そこには戦争における無数の人たちの死を無駄にしてはいけないという、
起草当時の人々の深い思いが込められています。
 私は僧侶ですが、この憲法の値打ちを考えるとき、
何か特定の仏教の教えに基づいて考え、発言しているのではなく、
仏教や宗教という以前の、人間の原点に立って、そこからほんまに素晴らしい憲法だ
と申し上げているのです。
 私は、お釈迦様の言葉に惹かれて仏教の世界にはいりましたが、
お釈迦様の教えは、特定の教えや教義にとらわれず、人間の原点、
いのちの原点に立つので非常に大きな見方ができる、
そこにその宗教思想の凄さがあると思います。さまざまな主義・主張の違いを超えて、
もっと大きな立場に立ち、心を大きくもちなさいというのが、
お釈迦様の教えだと申し上げていいでしょう。
 人間・いのちの原点に立っているという点で、日本国憲法の精神もまったく同じであり、
だから私は一級の宗教書だと感じたわけです。
そして、この原点に立てば、憲法擁護の運動は、あらゆる政治信条や信仰の違いを超えて、
手をつなぎ合えるものだと信ずるのです。

 第ニラウンド

 小泉首相から安倍首相の頃まで、外から来る改憲の危険を相当強く感じ、
取り組みを熱心にやっていました。
改憲の動きが一頓挫しさわれわれの運動もやや低調になっていました。
 ところが最近、誰からということもなく、また取り組みを始めようとしています。
基地問題や武器輸出禁止を緩和する動きなど、民主党政権の実態がわかってきた。
「やっぱこれはあかんわ」という気持ちです。
一時期頑張ったおかげで、ある程度ノウハウもあります。
これから「第ニラウンド」−。じっくり腰をすえた運動を、地元の方々と一緒に、
それこそ牛のよだれのごとく、粘り強くやっていきたいと思っています。

聞き手・写真 中祖寅一 (しんぶん赤旗 2010.12.31.金)




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